利益相反状態開示に関する指針|一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS

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利益相反状態開示に関する指針Policy of Conflict of Interest

第1条 指針策定の目的

美容外科の臨床研究においては、その研究成果を公表し社会へ還元するという、公的な利益への貢献が期待されるが、同時に、その成果の公表者(以下、「公表者」という)が当該公表に関し商業的または政治的な利益等の私的な利益を有している場合がある。私的な利益が存在すると、それによって公的な利益が不当に影響を受けるおそれがあるが、そのような状態を利益相反状態という。臨床研究の結果の公表は、純粋に学術的な判断に基づいて行われるべきであるが、利益相反状態が存在する場合、客観的に正当とは言えない考察や結論が研究内容として公表されることが起こり得る。また、正当な内容の公表であっても、その公表者が当該公表に関し私的な利益を有している場合、公正な評価を受けないことも考えられる。このような不適切な事態を避け、学会活動を健全に保つための対策が必要である。

そこで日本美容外科学会(JSAPS)(以下、「本学会」という)は、本学会の学術集会または機関誌等において研究の成果を公表する際に利益相反状態が存在する場合、当該利益相反状態を公開することにより本学会学術集会または機関誌等の独立性と公正性を守るため、利益相反状態開示に関する指針(以下、「本指針」という)を作成する。

第2条 基本理念

利益相反状態はそれが現実のもの、潜在的なもの、或いは外観上のもののいずれであっても、本学会の名誉および信用を傷つける可能性がある。よって、本学会は利益相反状態が現実に存在する場合および利益相反があると思われる場合のどちらにも対処しなくてはならない。本学会が教育、患者の安全、美容手術や治療の進歩に貢献するという使命を果たすためには、研究の資金提供者となる個人または団体との適切な関係を保つことが非常に重要であるが、臨床研究の結果の公表に際しその内容が資金提供者の意図に影響されてはならない。したがって、臨床研究の計画と実施に決定権を持つ研究責任者は、1.研究を依頼する企業または団体の役員、理事、顧問(無償の学術的な顧問は除く)となることを回避し、2.研究を依頼する企業の株を保有することを回避し、3.資金提供を受けた研究の結果から得られる製品または技術の特許権を獲得することによって私的な利益の生じることを回避すべきである。本学会の知的独立性を不適切な外的影響から守るため、本学会会員は臨床研究およびその公表を公的利益のみを追求して行うよう求める。

第3条 利益相反状態の概念

  1. 利益相反状態の定義
    利益相反状態とは、研究成果の公表者または当該公表者に影響を及ぼし得る近親者が、当該公表に関し商業的および政治的な利益等の私的な利益を有していて、研究成果の公表という公的な利益がその私的な利益によって不当に影響を受けるおそれのある状態をいう。
  2. 私的な利益の概念
    利益相反状態が生じる私的な利益は、金銭または経済的利益に限定されない。公表者が特定の個人・企業・政府機関――特に、本学会の使命や目的と矛盾する理念を掲げているもの――との間に有する関係そのものから利益相反状態を生じる場合がある。
  3. 現実の利益相反状態、潜在的な利益相反状態、外観上の利益相反状態の区別
    現実の利益相反状態
    利益相反状態が現に存在している場合 
    潜在的な利益相反状態
    利益相反状態が将来生じる可能性がある場合
    外観上の利益相反状態
    実質を問わず研究成果の公表内容との関係から利益相反状態があるように見える場合。

第4条 対象者

以下の者に本指針は適用される。

  1. 本学会の会員
  2. 本学会の学術集会、機関誌等で発表する者

第5条 対象となる活動

本指針は本学会が関わるすべての活動について適用する。本学会の学術集会または機関誌等で発表を行う研究者は本指針を遵守しなければならない。また、本学会会員に対して教育的講演を行う場合または市民に対して公開講座等を行う場合にも、その演者には本指針の遵守を求める。

第6条 開示すべき内容

開示すべき内容は、研究成果の公表に関し公表者が商業的または政治的な利益等の私的な利益を有している場合、当該私的利益の原因となる個人または団体との関係(以下「私的利益関係」という)である。私的利益関係を公表者が直接有する場合のみならず間接的に有する場合も含む。私的利益関係を間接的に有する場合とは、大学における寄付講座や、公表者が所属する大学または病院が政府から補助金を受けている場合など、公表者が所属する組織が私的利益関係を有する場合を言う。具体的な契約内容によっては利益相反に当らない場合も考えられるが、その判断は利益相反委員会が公表者の開示した内容を調査した上で行う。なお、国内において未承認の医薬品や医療機器、医療材料に関しては、講演や論文における研究成果の公表が、当該未承認医薬品や医療機器、医療材料の広告宣伝となる場合も考えられる。これについては当該医薬品や医療機器、医療材料が未承認であることを研究内容の公表と同時に開示しなければならない。また、これら医薬品、医療機器、医療材料の治験を行っている場合も、その旨を開示しなければならない。公表者、または公表者が所属する大学または病院が企業から未承認医薬品、医療機器、医療材料の提供を受けている場合についても、これを開示しなければならない。

現在及び過去1年間における私的利益関係の全てを開示しなければならない。株式等の所有に関しては、決定権を持つ立場ではなく株式等保有のみの立場であっても開示が必要である。提携について開示する際は、その団体との正確な関係を完全に記載しなければならない。所有についての開示および金銭授受についての開示は、所有の形態および報酬の名目を明らかにしなければならない。利益相反委員会は、開示が不完全であると判断した場合更なる説明を求めることができる。

公表者は、自己についての開示事項(1)~(9)の事項、並びに生計を一にする配偶者、一親等以内の親族または収入・財産を共有する者についての開示事項(1)~(3)および(9)の事項を、別に細則で定めるところに従い、本学会に申告して開示する義務を負う。

第7条 利益相反委員会

  1. 本学会の独立性・客観性・信頼性を維持し、利益相反状態の審査等をするため下記のメンバーにより構成される利益相反委員会を置く。なお、同委員会のメンバーは利益相反状態を有しない者であることを要する。

    1. 本学会の会長及び理事長
    2. 本学会の会長により任命された、利益相反委員会の委員長および委員。委員長及び委員は本学会の会員の中から任命する。
    3. 本学会の顧問弁護士
  2. 利益相反委員会の職務

    利益相反委員会は下記項目をその職務とする。

    1. 間接的な私的利益関係が利益相反状態に当たるか否かの判断
    2. 指針違反者への勧告ならびに理事会への勧告内容の上申
    3. 機関誌等の論文末尾への利益相反状態の開示の指示
    4. 学術集会における公表者の利益相反状態の開示の指示
    5. 申告書記載情報の適宜利用
    6. 利益相反状態を有する研究成果の公表における不適切な外的影響の有無の審査
    7. 本学会の独立性、客観性、信頼性を損なうと思料される研究成果の公表の差し止め、または取り消しについての理事会への上申。

第8条 指針違反者への措置

  1. 本指針に違反し、利益相反状態の適切な開示がなされなかった場合または開示された利益相反状態が虚偽であったことが判明した場合、さらに利益相反状態が適切に開示された場合であっても、臨床研究結果の公表の内容が明らかに資金提供者の意図に影響されたと判断された場合には、利益相反委員会にて審議し、同委員会は審議の結果を本学会の理事会に上申する。理事会は、利益相反委員会の上申に基づき、指針違反者に対して改善の勧告を行う。もしくは、理事会は事前の勧告なしに一定期間次の措置を取ることができる。

    1. 本学会が開催するすべての集会での発表の禁止
    2. 本学会の刊行物への論文掲載の禁止
    3. 本学会の学術集会の会長就任の禁止
    4. 本学会の理事、委員への就任の禁止
  2. 被措置者は、前項の規定に基づいてなされた措置について、本学会に対し、不服申立を行うことができる。本学会がこれを受理したときは、利益相反委員会において再審理を行い、理事会の協議を経て、その結果を被措置者に通知する。

  3. 本学会の関与する場で発表された研究において本指針に重大な違反があることが判明した場合、本学会は、利益相反委員会および理事会の議決を経て、本指針違反の事実を公表する。

第9条 細則の制定

本学会は、本指針を実際に運用するために必要な細則を制定する。

第10条 附則

本指針は2012年2月1日より施行される。

開示事項

  1. 株式会社等会社法(平成17年7月26日法律第86号)に基づく会社(以下、「企業」という)または営利を目的とした団体の役員、顧問職について、1つの企業または団体からの報酬額が年間50万円以上である場合、当該企業または団体の名称、役職名
  2. 株または持分権の所有について、1つの企業から受ける1年間の株による利益(配当と売却益の総和)が50万円以上である場合、または当該企業の全株式の5%以上を保有している場合、当該企業の名称
  3. 企業または営利を目的とした団体からの特許権使用料について、1つの特許権使用料が年間50万円以上である場合、当該企業または団体の名称
  4. 1つの企業または営利を目的とした団体から、会議への出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など、実費分を除く)の合計が年間30万円以上である場合、当該企業または団体の名称
  5. 1つの企業または営利を目的とした団体からパンフレットなどの執筆に対して支払われた原稿料の合計が年間30万円以上である場合、当該企業または団体の名称
  6. 企業または営利を目的とした団体が提供する研究費について、1つの研究に対して支払われた総額が年間100万円以上である場合、あるいは奨学寄付金(奨励寄付金)について、1つの企業または団体から、1名の研究代表者に支払われた総額が年間100万円以上である場合、それぞれの当該企業または団体の名称
  7. 研究成果の公表に含まれる未承認の医薬品、医療機器、医療材料の名称と当該企業または団体の名称
  8. 医薬品、医療機器、医療材料の提供を受けている場合、その名称と当該企業または団体の名称
  9. 上記以外の報酬等(研究とは直接無関係な旅行、贈答品など)については、1つの企業または団体から受けた報酬が年間5万円相当以上である場合、当該企業または団体の名称