"二重の目になりたい"と思っている方はもちろんのこと、"片方が二重なのに"といった方や"二重は二重なんだけど・・・"といった方もこの手術を希望されます。日本では歴史が古く手術例の多い美容外科手術で、多くの方がこの手術の結果に満足しています。
日本人には一重まぶたの方と二重まぶたの方は、概ね半々存在すると考えられています。もっとも奥二重といった状態もあり、これをどう判断するかで一重と二重の割合は変化します。
いずれにしても、この2つの"まぶた"の状態は共に正常なまぶたの構造ですが、一重を二重に変える希望を持つ方はあっても、二重を一重に変える希望を持つ方は稀です。
まず二重のまぶたの動き方を説明しましょう。二重のまぶたは一重のまぶたにはない上眼瞼溝(二重の線)があります。この上眼瞼溝は皮膚表面にある溝のひとつですが、この場合"折れ目"と考えて頂いた方がよいかもしれません。この折れ目は上眼瞼縁からほぼ6~8㎜程の所にあり、この折れ目の裏側から、概念として繊維性の薄い膜構造が目を開く時に用いる上眼瞼挙筋と結合しています。この上眼瞼挙筋は上まぶたを眼球に沿って、上方というよりもむしろ上後方にまぶたを引き上げる作用を持っているので、目を開く動作を行うと、この折れ目よりも下部のまぶたが上部にあるまぶたの後方へ引き上げられ、二重まぶたになります。
一重まぶたの方は、この上眼瞼溝(二重の線)あるいは折れ目から上眼瞼挙筋の動きを伝える薄い膜構造のようなものが欠損している状態なので、上眼瞼挙筋と折れ目の連続性を作り出していくのが二重の手術ということになります。言い換えれば、一重のまぶたの動きを二重のまぶたの動きに変える手術が二重の手術ということになります。
二重の手術は比較的目立つ部位を変える手術なのと、二重にはいくつもの種類があるので、あなたの希望をはっきりと伝える必要があります。
ご自身で細い棒を二重の線になりそうな部位を眼球上後方に向かって軽く押さえる事により、"仮の二重"を作り出すことが出来るはずです。そして押す位置を変化させることで、異なった雰囲気のあなたの"仮の二重"を作れるはずです。このような過程で得たご自身の希望を医師に伝えます。医師は専門家としてあなたの望まれた二重の形状を手術で作り出すために必要な手術の計画を説明すると思います。説明の内容にはあなたの目の特徴や、鼻や他の部位とのバランスなど含まれています。
手術計画で決められる要点は
まだ細かいことがあるにせよ、二重の手術はこの上眼瞼溝(二重の線)の位置の設定と、二重の幅(開瞼した時の二重の見え方)を決めることが最も大切です。
アイプチで、手術で得たいご希望に近いまぶたが作れる方は、それを作って先生にお見せすることは手術計画を作る上で、参考になります。
二重を作るためには、重瞼線の裏側と上眼瞼挙筋の間に何らかの方法で連続性を持たせなければなりません。この連続性の作り方として現在主に用いられている方法には2つあり、1つは「埋没法」であり、他のもう1つは「切開法」です。埋没法は予定される二重の線の裏側と上眼瞼挙筋との間を何本かの細い糸で繋ぎ合わせる挙筋法と瞼板へ固定する瞼板法があり、この連続性を作り出す方法です。そして切開法は手術により予定される二重の線と上眼瞼挙筋の連続性を作り出す方法です。
埋没法が適しているのは、時々二重になることもあるが二重が安定しないといったまぶたで、切開法が適しているのは、まぶたは厚く、目を開く動作が目立たない、あるいはまぶたの皮膚が余り気味で、数ミリ幅の皮膚を切除する必要があるまぶたです。
実際に多く見かけるまぶたは、このいずれでもない中間型なので、お互いの手術の適応が混ざり合っています。埋没法にも色々に工夫された方法があるように、切開法にも色々に工夫された方法があります。それは対象となるまぶたが単一のものではなく、様々な構造のまぶたが存在し、希望される二重にも色々なため、場合によっては部分切開法などが用いられています。
切開法の二重の手術は単独で行われる場合が多いのですが、以下に述べるいくつかの手術は合わせて同時に行われることがあります。
ご自身の二重の手術について色々お考えになっても、なかなか決心できないこともあると思います。一方医師にとっては、もしあなたの"まぶた"が二重になるとしたらそれはこれだと手術方法を含め示せます。このような解剖上無理の少ない二重を手術で得るためのコツを4ポイントお教えいたしましょう。
二重の手術経過の多くは以下のようなものです。
※切開法のみを行った場合は、2週間以上極端に腫れ続けていることはまずありません。
※埋没法はあたかも手術部位が全く腫れないかの如くに説明されることがありますが、これは幸運な例です。
※ひとつの手術の結果が表れるには、1ヶ月2ヶ月という時間が必要です。
術式の選択は先に埋没法ありき、あるいは切開法ありきではないと思います。まずあなたの希望があって、医師によるあなたのまぶたの診断があり、そして必要な術式を選ばれる必要があります。
術後の経過の中で特に大切なのは、術後の腫れとも関係し、さらにはともかく二重のまぶたに変化しているので、一体これで自分のまぶたがどうなるのかと心配される時期を経過しなければならないという点だと思います。この術後の変化への対応にはかなり個人差もあって、非常に重大に捉える方からほとんど気にされない方までいらっしゃるのが現実です。そして一定の期間が過ぎますと、ご自身のものとして新しいまぶたを受け入れ、ほとんどの方は色々心配したことも忘れてしまいます。ただ、二重の手術の直後はご自分で予想されたよりも派手に見え、心配される方が多いということは心に留めておいてよいでしょう。このような術直後の変化は時間と共に落ち着いていきます。
すべての美容外科の手術がそうであるように、美容外科の手術の結果に対し、あまり非現実的な期待を抱くことは間違いと言えるでしょう。二重の手術においては、一重のまぶたが二重に変わるだけと言えます。一方、一重が二重になることで、あなたの瞳の感じはまるで変わったものになると思います。むしろこの"まるで変わったものになる"ということについて、ご自身が納得できる必要があるわけです。そしてどのように細かく手術計画を練り、思う通りに手術が出来たと仮定しても、そこには思わぬ結果が待っているという不確実性についても、分かっておく必要があります。細い棒等で押して出来る二重と手術で出来る二重の間には多少差があります。またその手術の腫れ等がなくなり、手術によって出来た二重が本当の姿を現してくるのは1、2ヶ月後になると考えなければならないので、手術の効果の判定はその時期を過ぎてからになります。
美容外科の手術においても、すべての医療と同様の不確実性やリスクを伴っています。
一般論として、「埋没法」の欠点で作られた二重は取れ易いことが挙げられています。埋没法では上眼瞼挙筋の動きを重瞼線に連続させているのは、極細いナイロン糸です。この糸の劣化が起こらなければその連続性は保たれていると考え易いのですが、この糸にはまばたきや目を見開く度にある程度の力が加わるので、1回はわずかでも、回数が重なるとそれなりの力となっていきます。糸は切れなくとも、糸が掛かっている部分の肉が少しずつ切れていくことにより連続性は失われ、結果として二重が消えていく可能性があります。したがって、重いまぶたであればあるほど外れ易いと言えるでしょう。さらに埋没法では如何に細い糸とはいえ、糸が上眼瞼の中に残るので時にこれが悪さをし、痛みあるいは角膜や結膜の炎症の原因となる恐れも指摘されています。一方、解剖学的にあるべき位置に付けた切開法による二重はより確実で安定した二重としてその形態を保持すると考えられていますが、ともかく切開したという事実は残ります。この手術で作られた二重の線は解剖学的にあるべき位置に作られた場合は日時の経過と共にほとんど目立たなくなりますが、不自然な位置に作られた場合の傷痕が目立つことがあります。