レーザー治療|美容外科の手術|一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS

美容外科の手術Aesthetic Plastic Surgery

レーザー治療Aesthetic surgery using laser

日本にレーザー治療が導入されて早いもので30年ほど経っています。はじめの頃には炭酸ガスレーザーやアルゴンレーザーといったものだけでしたが、その後に用途別にいろいろなものが開発され、現在ではその種類も大変多くなっています。これらを大別すると1.メスの代わりになるような切開、あるいは2.皮膚を薄く剥がしたりするために用いるものや、3.赤アザや黒アザなど色に特異的に反応するレーザー光の各種に大別することができます。

そしてさらに細かく場合によっては一億分の1秒という細かい時間までレーザー光の作動時間を区切ったり、あるいは丁度カメラのフラッシュランプのような千分の1秒単位の照射時間をコントロールするような機能が付け加えられ、各種の波長の性質の異なるレーザーが臨床応用されています。これらを用いてアザの治療や傷跡を目立たなくする処置や入れ墨の除去、脱毛、さらには顔面の小ジワの治療など皮膚に関する美容外科のかなりの手術や処置を行っています。これらの機種に最近ではクーリングデバイスと言って、100分の1秒単位で局所をクーリングしながらレーザー光を照射することにより、皮膚内に起こる温度変化を用いて治療効果を高めるようなことも併せ行われています。

どのような麻酔が使われるのですか?Selection of anesthesia

レーザー治療が施行される症例は年齢や治療される面積も個々に大きく異なります。そしてレーザーの種類によっては、無痛とまではいかないまでも成人であれば充分に耐えられる程度の痛みに終わるものもありますが、多くのものは局所麻酔(クリーム・テープを含む)もしくは局所麻酔に何らかの痛み止めを併用した形式、もしくは全身麻酔によって行われます。ただ、このレーザー治療の多くは短いものでは数分、長くても30~40分の間には終わることが多いので、深度の深い麻酔が用いられることはあまりありません。

術後の経過The postoperative course

アザに対するレーザーでは通常何らかのカサブタ程度のものが約1週間ほど残りますので、治療された部位にガーゼと軟膏等によるドレッシングが施行されます。また、脱毛レーザーのようにその直後から皮膚の表面にほとんど変化を見ないものもあります。また、同じレーザーを用いても用い方によっては多少の腫れを伴ったり赤味を伴ったりする場合もありますので、細かくはレーザー治療のご相談の際に細かくお話します。

どんなものにどんな時にレーザー治療が有効なのですか?Effectiveness of Aesthetic laser surgery

ここでは代表的な症例を上げながらレーザー治療の効果を示します。

太田母斑の治療

太田母斑は顔面に生ずる黒褐(緑)色母斑のアザの代表的な例です。生下時に認められることもありますが、多くは7~8歳で出現しほとんどは20歳くらいまで色が濃くなり続けることが特徴で、治療しないかぎり生涯顔に残ります。主な発生部位は頬ならびに上下の瞼で時に側頭部や頸部にわたって母斑に認められることもあります。また同時にこれらの部位に小さく存在していることも珍しくありません。従来これらはドライアイス療法、もしくはクライオサージャリーと言っていわば冷凍療法のような形で行われてきたものですが、Qスィッチルビ-レーザーによる治療は太田母斑の治療に革命的変化をもたらしました。この方法によれば皮膚の表面にほぼ何ら傷跡を残すことなく太田母斑そのものを消し去ることができます。治療は3カ月ほどの間隔でレーザー治療を5回ほどに分けてQスィッチルビーレーザーの治療が行われます。

赤アザに対するレーザー治療

赤アザもしくはポートワインステインとも呼ばれている赤アザは多くは原則として、生下時より認められ身体の如何なる部位にも生じます。幼少時にはむしろ薄いピンクがかったと言えるような色調を呈し、特に毛細血管が拡張するような、お風呂に入った直後には鮮紅色を呈します。小学生中学生頃になってくるといくぶん赤アザの部位は隆起を始め、色は多少なりとも黒ずんでくるとともに、時に特に寒いところに突然出たような場合かなりどす黒い色に変化することも珍しくありません。さらに年が経まして50代、60代ともなるとその表面はかなりデコボコになり場合によりますと一部は潰瘍を形成し、時々出血を見るようになることも稀ではありません。このような赤アザに対する治療は主にダイレーザーを用いて行われます。頸部や顔面にあるものでは5~10回程度の治療で多くの場合改善を見るものですが、下肢にあるものでは時に難治性で治療に抵抗する場合もあります。この様な例でもレーザーによって、何もしなかった例に比べればその後の変化をかなり軽微に止めることができると考えられており、経年的な1年に1回ほどの経過観察を行いながら、少しずつでも治療を続けていかれることをお薦めしています。

黒アザのレーザー治療

このアザの中で特に問題となるのは巨大な獣毛性の色素性母斑と呼ばれるもので、巨大な面積に真っ黒く剛毛を伴って認められるものをいいます。もちろんこれらのもので小さいものなどはテッシュエキスパンダー法を用いて切除したり、または部位によっては植皮による治療が優先されますが、あまり巨大なものではレーザー治療以外には治療の方法が現在でも見つかっていません。このようなものに対してはエルビウムレーザーを用いた表面の擦過を用いた後にQルビ-もしくはQアレックスを用いて治療を行っていきます。このような症例に対し簡単だと申し上げることはまずできません。おそらく幼少時から十数回にわたる治療を計画し、少しずつ治していく以外には方法はなくなります。

レーザー脱毛

脱毛は従来特殊に製作された電気針を用いて施行することが一般的でありました。今でもある種の剛毛につきましてはこの方法が採用されることもあります。しかし、この方法を経験された方であればよく解るところですが、長時間かつ多数回そしてかなりの痛みを伴う治療であったことなどを考え合わせますと、レーザーによる脱毛は非接触型でかつ術後経過がその日のうちにシャワーに入れるといった程度の表面的な変化しか残さずに、毛に対する処置を行うことができる利点があります。ただし、電気脱毛法であれレーザー脱毛法であれ毛には毛周期といって現在生えている毛の他に、その毛が抜け落ちて次の毛に生え替わってくるという厄介な問題があるため、いわゆる永久脱毛を達成することは理論的にもなかなか難しい問題であることが解ります。しかし、このレーザー脱毛法により生えてくる毛が細くなったり、あるいはほとんど処理の必要がない位まで毛が減量することはよく経験することなので、毛の処理法として充分に考えるに足るひとつの選択肢であると思います。対象となる毛は躯幹や下腿あるいは腕に生えている異常毛や、毛膿炎を伴う非常に濃いヒゲなどが第一選択になりますが、特に女性にとっては脇の毛やスネ毛など美容的な見地から脱毛を試みられるのには適した方法と言えます。特に脇毛の処理の後などでは剃ったり抜いたりしたのでは得られないような、皮膚のツルツル感を感じ取って頂けると思います。

シワに対するレーザー治療The laser treatment for wrinkles

顔面のシワの原因にはコラーゲン繊維の菲薄化、顔面表情筋との関与から大ジワ、小ジワ等いろいろな名称で表現されています。そして、このようなシワに対する治療方法としてもフェイスリフトや上下眼瞼の手術、あるいは内視鏡を用いた鼻根筋の除去などに加え、表情筋の動きを止めるボツリヌス菌毒素の注射なども用いられ、さらには、いわゆる各種薬剤を用いたケミカルピーリングなどもあります。 これらいろいろなシワに対する治療法はそれぞれ有効なその作用機序などから、その術式や用いられる薬剤の作用機序などから本来あるべき適用はそれぞれに定まっています。レーザーを用いてシワの処置をするということは、皮膚の表面を蒸散させながら皮膚表面を擦過することにより、皮膚の持つ再生機能(ターンオーバー)を促進し新しい皮膚面を得ようとするものです。ケミカルピーリングにも同様の考え方がありますが、これは化学物質を使ったそれこそケミカルなピーリングであるのに比べレーザーによる皮膚のピーリングは物理的なピーリングのひとつに考えられます。このような目的で用いられるレーザーには、炭酸ガスレーザーとエルビウムレーザーとがあります。そしてこれらのレーザーでリサーフェシングすることで皮膚の再生を促し、皮膚に良い効果を与えます。ただ、日本人においてはこれを過度に用いると長期間にわたり色素沈着に悩まされる場合があります。事前に皮膚のケアを行いながらこれらのレーザーリサーフェシングは施術されます。エルビウムレーザーなどを組み合わせながら用いていく必要があります。

入れ墨のレーザー除去法Tattoo removal method of laser

入れ墨にも実にいろいろなものがあり、また、いろいろな色素が皮膚内に埋入されるようになってきました。このためなかなかひとつのレーザーで対応することは難しく、そこに封入されている物質に対して各種レーザーの反応なども見ながら、まず初めにエルビウムレーザーを用いて薄く皮膚を擦過し、埋入されている物質を浅くしてから必要なレーザーを照射する方法も採用されています。

まとめSummary

治療に用いられるレーザー装置は目的別にかなり多くのものが開発されてきています。特に最近5年位の間に開発されてきた機種は、照射されるレーザー光の波長や作用時間またはクーリングデバイスを装置したように、照射される皮膚面の温度のコントロール等にかなり高度に発達した医療機器になっています。とても一つの器械でいろいろな病変や目的を解決することはできません。要するに万能のレーザー治療機器は無いと思って下さい。したがって、この治療に携わるためにはレーザー治療についてよく知っていてかつ経験が豊富なことが必要になります。これらの治療や処置をご希望になる場合には担当の医師と細かく打ち合わせて戴くことが必要だと思います。