顔の輪郭形成術|美容外科の手術|一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS

美容外科の手術Aesthetic Plastic Surgery

顔の輪郭形成術Aesthetic Surgery of the Nose

"顔の土台"となるのは頭蓋骨、上顎骨、頬骨、下顎骨、鼻骨といった骨です。これらの骨が微妙に長かったり、短かったり、大きかったり、突出していたり、位置関係が狂っていたりすると顔のバランスがおかしくなり、顔貌の特徴としてかえって目立ったりすることがあります。このような状態を修正し、より良い形態に修正していくのが顔面の輪郭形成術(Facial Contouring)です。

このような手術の対象となるのは、

  1. 眉骨
  2. 頬骨の出っ張り
  3. 出っ歯(骨性)
  4. 下顎角部のエラ張り
  5. 小さ過ぎる顎
  6. 長過ぎる顔
  7. 広過ぎる顎の幅
  8. 顔面の非対称

などです。

相談に際してUpon consultation

まずあなたの希望をはっきりと担当医に具体的に伝えて下さい。この顔面骨の美容外科手術は、形成外科で発展してきた頭蓋顔面骨外科(Craniofacial Surgery)を通じて得られて、経験をもとに、より美的センスを持って施行されます。

この手術では顔貌の視診に加え、顔面の土台となる顔面骨を規格レントゲン写真(セファログラム)等を用いて、変形や気にされる部位を診断し、あなたの希望を加味し最も良い方法を探していきます。このような手術の中には、噛み合わせに関係する手術も含まれていることがあります。このような場合には矯正歯科医と協力しながら治療を行っていくことになります。

  1. 何か自分の顔が気に入らない
  2. 出っ歯でつい口元を手で隠してしまう
  3. 顎が小さいのではないか?
  4. エラが張っているのではないか?
  5. 歯科的矯正だけでは充分な改善が得られていない、または得られそうにない
  6. 鼻や顎に異物の挿入・増大術を行ったがどうも顔が大きく感じる

といった方々のための手術です。

あなたの本当の気持ちをお話下さい。そうすれば担当医は手術の方法やとるべき手段についてご説明します。きっと良い方法を現実に即して提案できると思います。

どんな手術があるのでしょう?Selection of surgical procedures

顔面輪郭形成術には以下に述べる色々な骨切り手術があります。

  1. 上顎骨分節骨切り術
  2. 下顎骨分節骨切り術
  3. 顎部平行離断術
  4. 顎部前進術
  5. エラ張りの矯正手術
  6. 頬骨外面骨削骨手術
  7. 頬骨体部骨切り手術
  8. 頬骨弓部骨切り術
  9. 眉骨修正手術
  10. Le-Fort I型骨切り術
  11. 下顎矢状分割骨切り術
  12. etc ・・・

これらの手術は単独に、あるいはそのいくつかが組み合わされてあなたの希望にそって施行されていきます。

麻酔の選択Selection of anesthesia

このような顔面骨の手術は、原則全身麻酔下で行われます。

回復までの期間The period to recovery

顔面骨に対する手術はかなり長期の入院が必要だと想像されるかも知れませんが、多くの例は2週間程度で本来の生活に復帰していきます。入院期間も3日から5日ほどと思って頂ければよいかと思います。術後の腫れは、上下の顎を同時に骨切りするような、一見巨大に見えても、下顎角部のエラや頬骨の突起を削るような手術でもさほど差はありません。また、咬合に関わる手術が行われた場合には、手術前後に歯科的な咬合の管理が必要になります。また場合によっては歯科矯正が追加されます。

手術の不確実性とリスクThe uncertainty and the risk

全ての医療と同じ様に、この顔の輪郭形成術にも医療としての何らかの不確実性とリスクを持っています。そしてこの手術は少なくとも形成外科の修練を、殊に頭蓋顔面外科に精通した者から受けるのがよいでしょう。個々の例におけるリスクの可能性は担当医と相談の際に話し合って下さい。

よくある質問The answer to frequently asked questions

上下顎骨分節骨切り術(セットバック手術)って何ですか?

上下顎骨分節骨切り術とは、上顎と下顎の4番あるいは5番の歯を抜歯し、その部分の歯槽骨および上顎骨、下顎骨を切除し、前歯の部分をその空間を利用して後方に下げる手術手技のことです。

抜歯される歯につきましてはそこにある変形量や実際にある歯の状態などを考慮しながら、歯科矯正医と相談し最も適切なものが抜歯されることになります。一見この方法は上下顎を抜歯し歯科矯正術のみによりこの空間に前歯を倒しこむ方法とよく似ているように見えますが、二つの方法で得られる結果に全くの差があります。

抜歯して歯科矯正のみで歯を舌側に傾斜させていくことは場合によりますと、正常な顔面骨に対する歯牙の傾斜を失うことを意味しています。分節骨切り術では上顎骨・下顎骨の最前部が骨切りにより後方に移動することによって、抜歯によってでき上がった空間を埋めていくことになりますが、原則的に歯牙の顔面骨に対する崩出角の変化は生じないことになります。

例えば、歯牙が異常に傾斜して生えている反っ歯状態の方が頭蓋骨の反っ歯状態を矯正するために、歯科矯正を行うことはおそらく崩出角の矯正につながると考えられますし、もし、上下顎骨の空間的な位置関係が頭蓋顔面骨全体として良い位置であるならば、この方法で充分だということになりますし、分節骨切り術の適用はありません。

分節骨切り術はあくまでも、頭蓋全体に対する上下顎骨の位置関係が前方にあることを意味している時に用いられる手法、ということになります。この話は少し面倒臭いお話かも知れませんが、このような細かい点に価値を求められる方がこの手術の適用患者だと思っています。

エラ取りってどうやってやるのですか?

現在ではほぼ口腔内から手術が行われます。奥歯のあたりの粘膜を切開しそこから下顎角部に到達します。本当にエラが飛び出しているようになっている方も時に見られ、これらの場合にはそのエラのみの切除を行うこともありますが、多くの場合下顎角部の厚みを減らしたり、あるいは、下顎そのものを切除しながらエラ張りを矯正していくこともあります。人間の顎は下顎枝と呼ばれる部分と、下顎体と呼ばれる部分で下顎角を形成しています。そして下顎体は頭蓋骨基底面に対し、女性であればおおよそ35度、男性でも30度程度のところに角度をもっているのが普通です。これがいわゆる顎のラインと呼ばれるものです。勿論この角度が大きくなれば顔は細長く見えるでしょうし、この角度が小さく20度程度になるとかなり四角い顔に見えるはずです。ただ、いずれにしても下顎角は人間の顔を構成する重要なランドマークの一つになっていますから、これを完全に消失させるような手術を計画したり、希望したりすることはあまり現実的ではないかも知れません。多くの方々が下顎角部のみならず、下顎枝から下顎体にかけての下顎周辺の外板を切除することで顎のラインが整い、顔がほっそりします。

頬骨の出っ張りに対する手術はどうやってやるのですか?

用いられる手術法としては非常に軽度な突出に対しては、骨の表面を削り取っていく方法を選択します。中等度以上な突出の場合には頬骨骨体そのものを骨切りし小さくする手術法を選択します。さらにこの2つの方法を組み合わせることもあります。殊に頬骨弓部が発達していて、口腔内からでは手術しきれない場合があり、このような場合には耳前部から側頭部にかけての切開を併用して行われる場合があります。

顔の長さを短くできますか?

Le-Fort Ⅰ型骨切り術を用いて上顎骨の中抜きを行うことで顔の長さを短くすることができます。通常この手術を希望される方は、単に顔が長いというだけではなく、それ以外の外貌に対する希望を持っているため、可能な限り咬合面の移動などを行い、これに合わせて下顎骨の骨切り術で移動し、これに合うように下顎骨の骨切り術を行い、顎の位置の移動も合わせて行っていくのが普通です。

このように上下顎にまたがる手術を施行した場合、咬合の管理が必要になり、通常数週間に及ぶ顎間固定が行われます。実際にこの手術を行うにあたっては、歯科矯正医を含めた診断ならびに治療計画の作成が必要になっています。Gummy smileがあり、顔の長さを気にされている方がよい適応になります。

眉骨の手術

眉骨は額の中央部分にある、前頭洞の前壁の突出により作られています。この突出は男性的な特徴のひとつともされています。この眉骨の手術にあたっては、前頭洞の前面を削っていくと、洞すなわち空洞が顔を表してしまうため、こうならないように前壁の後方で中抜きを行い、前壁を後方に移動する方法をとります。

合併症

輪郭形成術も医療の一部として行われる美容外科手術なので、医療としての不確実性を持っています。さらに顔面骨に対する十分な手術経験を持たずにこれらの手術を行うことは不可能に近いと思いますので、形成外科の中でも特にクラニオフェイシャルサージャリーを習得された先生方の手術になります。顔面の土台となる骨格に対する手術になりますので、診断にも慎重を期す必要があります。多少大きな手術にはなりますが、術後の経過は正しく手術が行われている限り平易で、文中でも説明している通り、ダウンタイムが2週間を越えることは少ないと思います。ただし手術の性質上、手術の結果が得られるのは6ヶ月程度かかります。

この手術も他の手術と同様、あなたが別の誰かになるといった非現実的な期待を持つことは具体的ではありませんし、またそのようにもなりません。この手術によって何が得られるかといえば、常日頃気にしている顔の嫌な部分が修正されたあなたの顔を得ることだと思って下さい。